スマートフォン対応、する?
ホムペくんはちょっとえずきながら答えます。
「さ、さっきのホムペは『スマートフォン対応』しているんですね。こういうふうにホムペの内容は変わらず、並びかえて見やすく表示させるスマホ対応のデザイン方法を『レスポンシブデザイン』といいます」
「レスポンシブデザイン……」
またよく分からないカタカナ英語が出てきました。
なぜこんな風に難しい言葉にしてしまうのか、日本語に訳しちゃだめなのか。
そういえばなんで急に政治家は「マニフェスト」とか言い出したのか、「公約」でいいじゃないか、英語ならなんでも格好がつくと思っているのか。
でももうその「マニフェスト」も聞かなくなったし、本当、流行り廃りなんてあっという間ね…
ゆきこさんが人の世の儚さにまで思いを馳せていると、ホムペくんが続けました。
「ホムペがスマホ対応するためのやり方としては、主に二つあります。さっき言った『レスポンシブデザインで作る』方法と、『スマートフォン用サイトを別に作る』方法です」
「パソコン用とスマートフォン用と二つ作らなくちゃいけないってこと?手間が二倍じゃない」
「確かにそうです。それに対して『レスポンシブデザイン』の方は、一つのホムペのデータに対して何通りかの指示を行う事で画像を並び替えたり文字の大きさを変えたりしてるわけです」
「あら、じゃあ『レスポンシブデザイン』の方が簡単なのかしら」
「いえ、そうでもありません。何通りかの指示を行うという事は、指示するためのプログラムをいくつも書かなければいけないという事ですしね。それに、どんな指示にも対応出来るデザインを考えるというのは、それはそれで結構大変なんです。だから、今の所どちらにも同じくらい長所と短所がある感じですね」
「ふぅん……じゃあ、うちのホムペをスマホ対応にしたい場合、どちらの方法を選べばいいかしら?」
「そうですね……。ゆきこさんはホムペを毎日更新してますよね、『今日のおすすめ』とか。パソコン用とスマホ用を別に作る方法だと、更新する時に両方とも書き換えないといけません。レスポンシブなら、一回書き換えるだけで大丈夫です。頻繁に更新するホムペはレスポンシブの方が向いています」
「なぁるほど。じゃあ、スマホ用を別に作る方法ってどういう良い所があるの?」
「パソコンで見てもスマホで見ても良い感じの見た目にしたい、デザインががっちり決められたホムペに向いてます。パソコン、スマホとそれぞれに合ったデザインを別々に考えて作れますからね。使いやすさもアップします。短い期間だけ公開するキャンペーンサイトとかでしょうか」
「更新のしやすさ重視だったら『レスポンシブデザインで作る』、見た目・使いやすさ重視だったら『スマートフォン用サイトを別に作る』って感じかしら」
「その通りです」
ゆきこさんは改めて手の中のスマホを見つめました。
「……あれ、でもそういえば『タブレット』って言うのもあるわよね。パソコンよりは小さくて、スマホよりは大きいの。ああいうものへの対応はどうするのかしら」
「そこなんです、問題は」
ホムペくんは難しい顔をして腕を組みます。
「『スマホ』や『タブレット』だけではありません。今、本当に色々な画面サイズの端末がどんどん開発されてきているんです。つまり、あるとあらゆるサイズの端末に対応できるホムペを作る事が求められてきている訳です」
「どんどんやる事が増えるってこと?」
思わず眉根を寄せて聞き返しました。
「そうなんです。今は『タブレット』への対応はパソコン用のデザインをそのまま縮小して表示させることで処理している場合が多いです。でも今後画面サイズの種類が増えてきたら、それだけでは対応出来ません。一つ一つデザインを変えてそれぞれのサイズに対応したホムペを作る……では間に合わなくなる可能性もあります。なので、一つのデータを使い回す『レスポンシブデザイン』が今後主流になっていくだろうとは言われています」
「なるほどねぇ……うちもお客様のリクエストにはなるべく答えたいと思ってるけど、やっぱり限界があるし、より効率のいい方法を考えなくちゃいけない時もあるわ。みんな、見えない所でも頑張っているのねぇ」
「ほんとですねぇ」
ゆきこさんとホムペくんは二人でしばし物思いにふけりました。